小泉首相に沈着冷静な決断と行動をお願いする

内閣総理大臣小泉純一郎殿

 9月11日、米国ニューヨーク、ワシントンなどで起きた同時多発テロ事件のような手段を選ばない非人道的行為は、首相がしばしば発言されたように、決して弁解の余地のないものであり、 断じて許されるべきものではありません。
 日本としても緊急に行われるべき課題は、被害者の救出、破壊からの復興、遺族の方々の物心両面にわたる救済等、まことに数多くの問題が山積し、それらへの対応が政府と民間レベルで進められております。これらが一層力強く推進されるような施策を継続してください。そして長期的には、国際テロ組織の解体、その精神的な土壌としての反米意識の解消への絶え間ない努力こそ、国際社会の一員としての日本のなすべきことであり、そのための的確・賢明な諸施策を立て、着実に実行してください。
 世界に蔓延している国際テロ組織と、それを支えているものを根絶することは、武力では不可能です。ところが世界の政治家たちは、武力によるテロ絶滅に乗り出しており、理性を失ったような過剰反応を示しております。それは一時的・短期的にはともかく、究極的な解決手段ではありません。一時的・短期的な解決のために、数多くの一般市民を巻き添えにすることが明らかであるからです。テロは「弱者の武器」であり、テロ実行者は一般市民の中に潜んでいます。このテロ犯人を「強者の武器」である大量殺戮兵器で滅ぼそうとするなら、同時に数多くの一般市民をも滅ぼす結果を招くことになります。一般市民はテロに脅えていますが、さらに報復攻撃にも脅え、その強大・広範な破壊力の巻き添えになることを一層恐れているのです。
 
 日本国の国是は非武装・戦力不保持・武力行使禁止であり、この国是を私たちは誇りとしております。しかし、首相は「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と憲法前文にあるから米国の武力行使を支援する、と語っておられます。その前文には「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意した」とも書かれてあるのです。前文全体の意図は、《武力行使をしないあり方で国際的に名誉ある地位を得たい》ということではありませんか。第9条にはそれを条文化したものです。
 戦争の惨禍が起こらないような「仕事」は沢山あります。国家の総力をこのような「仕事」のために尽くすように、憲法の前文および第9条に明記された国是に沿った政治の方向に、しっかり的を絞ってください。
 首相は8月13日、靖国神社の社頭で「不戦を誓った」と発言されました。私たちも全く同感です。それにもかかわらず、首相は報復戦争への加担を米国大統領に約束し、それを果たすための法的整備を政府・国会に指示しておられます。不戦を誓ったのであれば、いますぐ「指示」を撤回していただかなければなりません。「不戦を誓った」日本国首相であれば、報復戦争へと傾く米国大統領を思いとどまらせるように働きかけることこそ、米国の友好・同盟国としての務めではないでしょうか。
 
 小泉首相は、戦時中の特攻攻撃に痛く感動して涙を流された、と聞いております。「悠久の大義に生きるために自己を犠牲にした」真心が、首相の琴線に触れたのでしょうか。しかし、国家の頭脳たるべき将来有為の人材を国家が死地に追いやり、軍事のみを推進した旧日本の政治家たちの失政にも目を向け、それを首相は反面教師にしてください。靖国神社参拝の理由として、首相は「心ならずも戦場にゆかざるを得ず、命を落とした人に感謝する」と言われました。彼らが戦後日本の繁栄の礎となったことへの感謝でしょうが、「戦場にゆかざるを得ない」政策を遂行した先輩政治家たちの誤りにも思いを馳せて、その轍を踏まない決意を社頭で明らかにして頂きたかったと思っております。
 どうか小泉首相におかれては、武力によらないテロ撲滅のための「仕事」に最大の努力を傾け、後方支援であっても報復のための戦争に自衛隊を派遣するようなことはなさらずに、 日本国民および米国をはじめとする世界の人々のために、 沈着冷静な決断と行動をとられますよう、心からお願いいたします。そのために私たちは、ひたすらお祈りしております。

 2001年9月27日

日本長老教会「ヤスクニと平和」委員会
委員長  遠藤 潔
外委員  一  同



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