有事法制案は廃棄にしてください

2002年5月14日
「ヤスクニと平和」委員会 委員長 遠藤 潔

 私たちは現在、国会で審議されている有事関連3法案に、多くの疑義があり、法案の成立に反対し、廃案を求めます。以下にその主な理由をあげます。
 冷戦終結後、米国はその軍事政策の大転換を迫られました。それで、軍隊組織、海外軍事基地の現状維持を前提に、新らたな敵探しを始めました。まず米国が輸出した最新鋭の武器を豊富に所有する国々の検討から始め、同盟国を対象から当面ははずし、最後には、核・生物・化学兵器の疑惑ありとの「ならず者国家」のリストが作成されました。最近は「悪の枢軸」というように呼ばれております。
 そして戦略として、核兵器の不拡散、ハイテク兵器の大量投入による短期決戦、軍事同盟国への軍事費負担増要求、軍事・外交・貿易を一体化させた国益の追求などが決まりました。この路線はレーガン、ブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(息子)に一貫して引き継がれております。
 冷戦を前提とした日米安保条約と在日米軍との存在理由も当然問題となり、米国は東アジア戦略(ナイ・イニシャティブ)を策定し、東アジアの10万人の米軍のプレゼンス(日本に4万人余)を今後、二十年存続させることにしました。特に日米軍事同盟維持が最重課題であるとされています。これをうけて橋本・クリントによる日米安保共同宣言(価値観共有のパートナーシップ)、新ガイドライン、周辺事態法、と続きました。安保再定義と呼ばれる一連の動きは、在日米軍の任務が、日本と極東アジアの防衛から、「ならず者国家」への先制攻撃へと180度の転換がなされたものです。自衛隊は専守防衛から米軍と共同作戦に従事することになりました。
 2000年のアーミテージ報告は、この路線をさらに露骨にしたもので、結語には、
 「150年近く前にペリー提督の黒船が東京湾に来航して以来、米日関係が日本とアジアの歴史を作ってきた。将来はどうあれ、これは確たる事実である。
 21世紀の夜明けにあたって、逃れようのないグローバリゼーションの力と冷戦後のアジアにおける安保環境の激動が米日に複雑な課題を突き付けている。
 どのように両国が個別的に、またパートナーとしてその課題に対応するかがアジア・太平洋地域の安保と安定、そして新しい世紀の可能性を決めるであろう。過去において両国の相互作用が地域の経済・政治・戦略に影響したのと同じである。」とあります。 まさに、砲艦外交そのものではないでしょうか。
 冷戦後、日本に非自民内閣が誕生し、防衛政策の見直しの動きがあり、「日本の安全保障と防衛力のありかた---二十一世紀に向けての展望」を防衛問題懇談会に諮問しております。同会は、日米安保条約だけに依存しない、地域的多角的安全保障協力の方針を答申しております。この懇談会の動きを米国は注視しつづけ、日米安保破棄をおそれ、ナイ・イニシャティブを策定した経過があります。
 私たちは、日本の国益を追求するに当たっての基準は日本国憲法と国連憲章であるとの立場を堅持すべきと考えます。日米安保条約もサンフランシスコ平和条約も国連憲章に則っていることが明記されております。
 橋本内閣になったときの日米安保共同宣言は、集団的自衛権の行使を打ち出したものですが、内閣法制局は、個別的自衛権の行使が憲法に定められた、武力行使の限界との見解を変えておりません。国連憲章には、国家の自衛権を認めておりますが、集団安全保障体制が作られるまでの暫定的なものとの条件つきで、その行使を認めているのです。
 新ガイドラインは二国間の軍事同盟の性格をもち、集団的自衛権の武力行使の指針であり、国連憲章に合致するとは謳いつつ、集団安全保障体制への移行を目指してはおりません。集団安全保障体制下の国家間には「仮想敵国」の概念は含まれてはおらず、「仮想敵国」を前提とした軍事同盟の固定化は国連憲章の精神に反するものです。
 周辺事態法は、自衛隊の後方支援を定めたもので、武力行使はできませんから、集団的自衛権の行使を定めたものではないといいます。
 「武力攻撃事態法」案は、個別的自衛権による武力行使を定めたもので、合憲であるといいます。相手国が日本への武力攻撃の態勢をととのえた時点で、この法案は武力迎撃態勢をととのえることができ、相手が攻撃した場合には反撃できるという内容です。
 政府は周辺事態法と「武力攻撃事態法」案との間で重なる場合もあるといいます。現在、周辺事態法の発動によって後方支援活動している自衛隊は、相手国から攻撃された場合、活動を停止し、撤退することになっております。しかし、「武力攻撃事態法」案が成立すれば、後方支援活動への武力攻撃があれば、この法案が発動され、武力攻撃に応戦できるというのです。
 周辺事態法と「武力攻撃事態法」案がセットとなって、米軍は前方で、自衛隊は後方で、武力行使が可能となるのです。これは実質的に、集団的自衛権の行使、米軍の戦略によれば「ならず者」「悪の枢軸」への共同先制攻撃が可能となるのです。
 憲法は国際条約の遵守を規定しておりますが、再定義された日米安保条約は、憲法の最高法規性を侵害するものです。 
 現在、自衛隊は大規模災害、戦争終焉被害地再建、難民移送、機雷・地雷の撤去など、戦闘が行われていない地域での活動を、地球規模の地域で行っております。憲法の平和主義に沿った日本が行える国際貢献は多岐にわたりますが、そのなかで自衛隊が行える活動にも限界があります。例えば、自衛隊のPKO活動では、PKF武力行使が禁じられております。
 現在、国家が滅亡するような大規模武力攻撃に日本が曝される事態は存在しません。自衛隊の備蓄武力だけでは反撃できず、一般国民の協力を法律で強制しなければ反撃を継続できない事態は想定できません。唯一想定できるのは、米軍の作戦行動の後方支援活動への武力攻撃事態です。「武力攻撃事態法」案は、そのためのものに外なりません。
 
 日本長老教会では、湾岸戦争を契機に「戦争に関する公式見解」を公表しました。それは日本長老教会の信仰告白の精神は、日本国憲法の平和主義精神と軌を一にするもので、国家存立のための自衛権の発動は平和主義の精神に反するものではないとするものです。平和的な解決努力を欠いた、積極的な武力優先主義の戦争観(正戦論)が両者には存在しないとの見解です。それに対して有事関連法案は、他国と軍事同盟を結び、先制的・積極的な武力行使を容認する「正戦論」に属するもので、信仰告白の精神と憲法の平和主義精神とに反するものです。