首相の靖国神社参拝に抗議します

内閣総理大臣 小泉順一郎殿

2003年1月17日
日本長老教会「ヤスクニと平和」委員会 委員長 遠藤 潔

 2003年1月14日に首相は靖国神社に参拝しました。今回の参拝が公約の実行と首相個人の信念とによることを強調し、中国・韓国の反対は毎度の ことで折り込みずみ、それによって参拝中止は考えておられないことが、はっきりしてきたように思います。 2001年の8月15日に参拝するか否かで「熟慮」すると言われておりましたが、熟慮の中身に中国・韓国の反応は入っていなかったのでしょうか。

 昨年4月、一昨年8月の参拝に際しても、 私たちは抗議の声明を出しました。抗議の論拠は、憲法第20条に違反する行為であることを中心に据えました。今回も同じ論拠で首相の靖国神社参拝に抗議いたします。

 そして今回は、 さらに加えて、憲法の前文に明記してある国際協調・平和主義からの逸脱為としての首相の参拝に抗議いたします。

 中曽根首相、橋本首相、そして小泉首相の度重なる靖国神社参拝に対して、 毎回、特に中国・韓国の政府・国民の激しい抗議がありました。そして、その度毎に両国との国交が損なわれ、友好関係が後退し、その修復に多くの外交努力と 時間とをかけております。戦後57年を経過しているにもかかわらず、友好関係は一進一退を繰り返すだけであります。これは国際協調・平和主義の国是に沿わ ないことではないでしょうか。

 今回の参拝は、金大中韓国大統領と川口外務大臣との会談の前日に行われました。どうも偶然ではなく、政治的な意図があると感じておりま す。一つは、朝鮮民主主義人民共和国の核開発問題での会談を損なわないために、韓国側から首相参拝の抗議はできないだろうとの読み、あるいは、これと対極 の意図―《韓国と必要以上に親密になるな》との政治的な意図―が感じ取られます。

 首相の靖国神社参拝がいつのまにか、外交カードとしての役目を果たすようになってきました。それまでは、閣僚の「過去の戦争・植民地支配を肯定する」暴言・妄言が、外交のカードの役目を果たしてきましたが、それに代わるカードが用意されたもののように思います。

 明治政府の「脱亜入欧」政策が、伝統の政策として現在も生きていて、憲法前文の精神で政策を推進する気はないのではないかと思われます。 日本の政策の本音には、中国・韓国とは真の意味で対等な関係を結びたくないという思いが、いまだに残存しているのではないかと疑います。

 戦後、南北朝鮮統一運動が起きるたびに、これを歓迎する「建前」上の政府声明とは裏腹に、本音では隣国が強国になることを恐れる動きがありました。朝鮮半島の平和は日本の平和に欠かせないとは、南北分断のままで両者が戦火を交えないということのようでした。

 アメリカも、アジアの中国・韓国・日本が連帯して《東アジア連合》のようなものが造られるのを嫌っております。アメリカがヨーロッパ連合 と東アジア連合とに挟まれてしまうからでしょう。ピョンヤン宣言のあと間もなく、アメリカは朝鮮民主主義人民共和国の核開発を暴露しました。ピョンヤン宣 言の政治路線に妨害を加えたものと思われます。日本政府も、あわてて「脱亜入欧」の路線に引き戻そうとしているのではないでしょうか。

 首相の靖国神社参拝を、中国・韓国は、外交カードとして使っていると言われています。それに「土下座」するな、という声が聞かれます。日 本はそれを逆用して、そのカードを切らせるカードとして、あえて首相が靖国神社に参拝しているとしか思えません。そうであるとすれば、宗教法人靖国神社と その「祭神」に対して、これほど侮辱的なことがありましょうか。

 お願いします。私たちの意を酌んで、宗教を政治に利用しないでください。そして、「脱亜入欧」から「国際協調・平和主義」路線へと転換する道をを歩んでください。