首相よ、日本の首相として振舞ってください

内閣総理大臣 小泉純一郎殿

2003年3月21日
日本長老教会 「ヤスクニと平和」委員会  委員長 遠藤 潔

 内外情勢が多事多難の最中にあって政務に精励されておられることに感謝いたします。
 私たちは日本長老教会はプロテスタント・キリスト教会の一派に属し、その下の「ヤスクニと平和」委員会の構成員であります。
 さて、首相は3月19日、対イラク政策に関して米国の政策を支持すると言明されました。首相はかねてから、アメリカはアメリカの、フランスはフランスの、日本は日本のそれぞれの立場があると国会などで弁明されてきました。それぞれ独自の立場で自主的に決めるというもので、私たちは、全くその通りであると同意しておりました。ただし、各国民は大統領なり首相なりの一国を代表する立場の人から、それぞれ対イラク政策の明確な根拠が示され、筋の通った論理で語りかけられ、理解を求められました。従って国民はそれに賛否を示すことができました。まさに民主的な政治過程を政府と国民が共有していました。これに反して、日本国民は、首相からの明確な根拠、論理で対イラク政策を示されないまま、いたずらに時を過ごしてきました。国民の側から態度を明確にするようにと迫るばかりでありました。「仮定の問題には答えられない」とか、明確にしない理由が「外交戦略の秘密」とか「国益を損なう」とか曖昧な不明確な反応をされるばかりでした。平和的な手段で解決を求める全世界的な澎湃たる世論に対しては、「世論に従って政策を進めると間違えることがあるのが歴史の経験だ」とこれまた、打って変わった態度で、大変明解な言明をされ、国民の怒りをさそいました。
 結局、首相は日本の政策は「アメリカの政策を支持する」という政策であったことを明らかにしました。日本独自の自主的な判断、外交戦略、国益追求はなされていなかったということが明らかになりました。アメリカの政策は、アメリカの外交戦略、国益優先から出たもので、それが日本の外交戦略と国益と一致する筈もありません。戦後日本は平和主義憲法を国是とし、外交的には国連中心主義、国家の安全保障は日米安保条約によるとして、歴代内閣が政権を維持してきました。敗戦前に国連憲章ができ、世界平和の枠組みができ、戦後日本国憲法はその平和主義を一層徹底したものとした制定されました。それは国連憲章と日本国憲法との間の期間に原子爆弾が完成し、日本がその被爆国となったという歴史的な事実があったからです。
 サンフランシスコ平和条約には、日本国が「国際連合憲章の原則を遵守し、世界人権宣言の目的を実現するために努力」することと明記されており、日米安全保障条約には「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民およびすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し」とあります。日本国憲法も日米安全保障条約も国連憲章を基盤としていることを再確認してください。
 首相始め閣僚、政府が最近になって、日米安保条約ではなく、日米同盟という言葉を明らかに意図的に使ってきております。それは、国連中心主義と日米同盟の両立か否かという、両者を対立軸としてしまおうとする意図があるのでしょう。国連か日米安保かとの対立はあり得ないからです。国連憲章から日米安保が出てきたからです。
 そして、国連中心主義か日米同盟かの二者択一を迫られるならば、日米同盟をとるということを言い出されました。これは、明らかに日本国の国是に反する政策です。日本の国是は日本国憲法によっており、この憲法は国連憲章の精神に基盤をおくからです。
 日米同盟を選択することが日本の国益にかなうとまで言っておられます。しかし、政治は国是に従った国益を追求すべきでありましょう。国是を無視した国益追求は、首相の言われる「政策なき世論は政治を誤る」と全く同じ論理に従って国を危うくするものでありましょう。フランスもドイツも国益を損するかもしれないが、それでも国是を優先し、その国是が国連中心主義に基礎をおいたものであるが故のものでありますから、あくまで国是を貫き、国連活動を国益に優先したものでありましょう。まさに政治の王道をゆくものです。
 首相は、靖国神社参拝をここ数年主張し、外交的には国益を損ねることもありつつ、首相個人の「政治的信念」を貫いておられます。靖国参拝と国是との関係は、不明確な部分があり議論が分かれるところですが、首相が国益を中心として行動されず信念に従って歩むとする政治姿勢をとっておられるように見受けられます。それならば、日米同盟が国益にかなうなど申されず、日米同盟優先は国是にかない、かつそれが国益にもかなうことであることを、明解な論理で国民のまえに説明してください。民主的な政治家には説明責任が負わされています。
 国際政治の難問は、数学でたとえれば無数の未知数をもった多元連立方程式を解くようなものです。国連はその問題を解くのに試行錯誤を繰り返し、正解を求めて模索している状態です。正解への道のりには時間がかかります。解けない難問を子供に課し、早く解けとせかし、解けなければ殴ると脅すようなことは避けるべきです。日本政府はそれに追い打ちをかけるように、解けないのをみて、解かないのが悪いのだといっております。日本も一緒になって解く知恵を出すのが大人のとるべき態度ではないでしょうか。日本の国是は国際平和主義であります。



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