イラクから自衛隊を撤退させてください

小泉純一郎首相殿

2004年5月4日
日本長老教会 「ヤスクニと平和」委員会  委員長 村瀬 俊夫

 日本国自衛隊の最高責任者として、イラクに派遣されている自衛隊の活動に関し、日夜ご心労の程を推察し、その重責に耐え、正しく重責を担われるように、お祈り申し上げます。
 その祈りの中で私たちは、自衛隊がイラクから撤退するように願い、首相が撤退命令を出されることを強く要望します。その理由は以下のとおりです。
 
 1.イラク特措法によれば、自衛隊の活動可能な地域は非戦闘地域に限られます。しかるに今や、イラク全土が戦闘地域化しつつあり、非戦闘地域はなくなりつつあります。「自衛隊は撤退しない。撤退する理由がない」と首相は申されます。それは換言すれば、「サマーワは非戦闘地域である」と公言されているのですが、私たちは、サマーワも戦闘地域になっていると判断します
 
 2.イラク派遣命令を出した日、報道記者の前で、首相は3回にわたり、憲法の前文の一部分を読み上げ、国民の理解を得ようされました。「憲法第9条をなぜ読み上げないのか」との記者団の質問に、「限られた時間内に第9条まで読み上げる時間がない」と答えておられました。前文と第9条とを一回ずつ読み上げる時間はあった筈です。第9条を読み上げれば、イラク派遣はこの条文に抵触するのが明らかで、その批判をかわすため、あえて前文の一部だけを持ち出したものとしか思えません。首相は以前から前文と第9条との間に「隙間」があるというのが持論でしたが、今回の説明はその「隙間」とは「矛盾」であるかのように、「前文」を立てれば「9条」が立たず、「9条」を立てれば「前文」が立たない、という論法で「前文」を立てているようにとれます。私たちは、両者には「隙間」も「矛盾」もないと理解しています。
 
 3.米英軍の一方的な先制攻撃に破壊し尽くされたイラクの復興のため、国連は動き、加盟国に復興協力要請決議が出されました。それは加盟国が軍隊を派遣するようにとの要請ではありません。政府側の国会答弁はそれを自衛隊派遣の重要な理由に挙げておりますが、決議の曲解ではありませんか。破壊は武力によるかも知れませんが、建設は武力によっては達成できません。
 
 4.スペイン、スエーデンなどは、軍隊のイラク駐留継続を打ち切りました。それは、米英軍の先制攻撃に「大義」がなかった事実が明らかにされつつあり、駐留の「大義」をそれぞれの国民の前に説明できなくなったからです。米国のブッシュ大統領も、最近では、「イラクは大量破壊兵器を開発する能力があった」と言わざるを得なくなっています。それなのに首相は「今でも大量破壊兵器はあると信じている」と言われます。「見つからないことは、存在しないことであるとは言えない」と3回も国会で答弁されました。個人的な「信念」とか「詭弁」とかで国民を迷わし、国政を左右しないでください。
 
 5.イラクへの先制攻撃の是非で、国際世論と米英政府とは対立しておりました。日本でも毎日戦争反対のデモがくり広げられました。事実、フセイン大統領の独裁政権を倒し、イラク国民の自由で民主的な国家を建設する、との米英政府の目論みは外れてしまいました。米国政府側に立つ軍事専門家も、米軍事作戦の誤りを認めております。首相はこの事態をどのように見ておられますか。「正義」のありようを正しく見据えて形成されてきている国際世論を追認し、その国際世論に従ってください。
 
 6.首相は、国連は頼りにならない存在だと申されました。しかし、世界平和の秩序維持の権威は国連にある、と私たちは考えております。その国連の権威を一層高めるために各国は絶えず努力をすべきでしょう。その権威を軽視する首相は、戦後一貫して貫いてきた国連中心主義を否定することになりはしないでしょうか。
 
 7.首相は靖国神社を4回参拝されました。福岡地裁判決文の中で、小泉首相の靖国神社参拝は違憲行為に当たると書かれております。首相は4回も「どうして違憲なのかわからない」とくり返し言われました。違憲ではない理由を、国民の前で説明してください。「二度と戦争を起こしてはいけない」、「心ならずも戦場に赴き戦死した霊に敬意を表する」、「平和を祈った」という気持ちに同感する国民はおり、同じ気持ちで参拝する人々もおりましょう。この人々は憲法違反の行為をしているのではありません。しかし首相の参拝となると様相は異なります。それが憲法違反行為であることの指摘を判決文から正しく読み取って下さい。首相は記帳に際し「単に小泉純一郎ではどこの誰であるかわからぬので総理大臣の肩書きを書添えた」と言っておられます。職務行為を一生活者の参拝行為とみせるあいまいなお答えです。福岡地裁の判決文では、執拗なまでの度重なる参拝の裏には隠された政治的な意図があると断定しています。イラクに派遣されている自衛隊が殉職した場合の国としての対処に、その隠された意図があるのでしょうか。首相は自衛隊員の「生殺与奪」権を握る最高責任者でもあることを私たちは重視しております。
 
 私たちは、湾岸戦争、アフガニスタン攻撃支援、イラク先制攻撃に、すべて反対の立場をとってきました。この世界が平和であることを願い、平和でない状態が生じた場合には、一刻も早く平和を回復するような努力を微力ながらしてきました。聖書には「平和をつくり出すものは幸いだ」とのイエス・キリストの言葉が記されております。武力によって平和はつくり出せません。自衛隊を撤退させ、武力によらない平和づくりに力を尽してください。そのために私たちは協力を惜しみません。
 
 
(参考資料 WEB サイトから)
      2004.5.17
内閣法制局の「非戦闘地域」新解釈
~前官房長官、国民に隠蔽!?~
青山 貞一
 
 日本政府が法制化で全面的に頼りにしているのが内閣法制局だが、この4月、その内閣法制局が福田前官房長官に報告していたイラクの「非戦等地域」に関する解釈を、前長官が政府見解とすることを留保していたことが共同通信の配信で分かった。
 さらに防衛庁長官は、この内閣法制局の解釈をもとにすると、イラクのサマワがイラク復興支援特別措置法に言う「非戦闘地域」でなくなり、陸上自衛隊の活動中止、撤退となる可能性が高いことから、同解釈に反発していたことも分かった。
 共同通信の記事は、その意味で、自衛隊のイラク・サマワ地域への派兵の法的是非を判断する上できわめて重要な記事である。
 4月以降サマワに何回も砲弾が撃ち込まれ、またオランダ兵が戦闘で死亡するなど、どう客観的に評価、判断してもイラク特措法による「非戦等地域」ではない、と評者らは論陣を張ってきた。
 その意味で福田前官房長官が内閣法制局から報告を受け取りながら、国民に報告していなかった問題は、今後、国会でも大きな論議を呼ぶことになると思われる。また小沢一郎衆議院議員は、今後民主党の代表となったら、野党第一党党首として、この重要問題を国会で徹底論議すべきである!
 
 ※ 配信された共同通信の記事は、東京新聞など地方紙が2004年5月16日(日)
    朝刊に掲載した。しかし、共同通信が配信していない朝日新聞、読売新聞、
    毎日新聞等の読者には当然記事が提供されていない。毎日新聞は16日午後8時
    Webで記事とし、17日朝刊に掲載した。他社も後追いであれ追跡し、より多くの国民に知らせて欲しい。
 
『サドル派、国に準じる』 内閣法制局解釈『非戦闘地域』と矛盾
                        東京新聞2004.5.16
 内閣法制局が、イラク南部サマワで復興人道支援活動を展開している陸上自衛隊部隊の撤退にもつながりかねない解釈をまとめ、四月に福田康夫前官房長官に報告していたことが十五日分かった。政府関係者が明らかにした。
 福田氏は法制局の解釈を政府見解とすることを留保。防衛庁は解釈を認めれば、サマワがイラク復興支援特別措置法上の「非戦闘地域」でなくなる可能性もあるため、激しく反発している。
 内閣法制局が報告したのは、米軍との衝突を繰り返しているイスラム教シーア派の対米強硬指導者サドル師支持派を「国に準じる者」との解釈。
 石破茂防衛庁長官はこれまでの国会答弁で、自衛隊の派遣先となる非戦闘地域について「海外での武力行使を禁じた憲法九条を担保する規定」と説明。その際、「戦闘」については「国または国に準じる者による、組織的、計画的なもの」と定義してきた。防衛庁幹部はサドル派について「組織性、計画性は認定できる」としながらも、「国に準じる者」と認定するのは困難との立場だ。
 しかし法制局の解釈に従えば、サマワでサドル派による攻撃や応戦があった場合、イラク復興支援特別措置法上の「非戦闘地域」でなくなり、結果的に「陸自部隊の活動中止-撤退」につながりかねない。
 サドル派は十万人に上るとされる民兵組織を持ち、「反米、反占領」を主張して米軍との衝突を繰り返し、米軍が壊滅対象と位置付けている。
 防衛庁によると、サマワにはサドル派とみられる約三十人のグループがあり、米国の占領統治に対して反対する活動を続けている。
 十四日夜(日本時間十五日早朝)には、サマワ市街地で、オランダ軍、イラク警察と、サドル派とみられる武装勢力が衝突、イラク人治安当局者一人が死亡するなど治安悪化が深刻化している。