首相の靖国神社参拝に抗議します

内閣総理大臣 安倍晋三殿
安倍晋三内閣の閣僚の皆様

 第二次安倍晋三政権の登場で日本国憲法改正が声高に叫ばれるようになったことに、私たちは大きな危機感を覚えています。それとともに日本国の平和と安全のため東アジアの近隣諸国(韓国・北朝鮮及び中国)との関係が改善されるどころか、いよいよ悪化するのではないかという危惧の念を強く抱いていました。 それが4月21日から始まった靖国神社の春季例大祭に安倍首相が供物を奉納し、麻生副首相と他の二閣僚が参拝したことにより、にわかに現実のものとなったのです。先週末に予定されていた韓国外相の来日が取り消され、緊張した北朝鮮情勢に対処するための大切な両国外相会談が中止されました。5月1日に予定されていた高村自民党副総裁を団長とする日中友好議員連盟による訪中も中止のやむなきに至りました。
 こうした事態が生じることを、安倍首相も安倍内閣の閣僚の皆様も予想していなかったのでしょうか。予想していなかったとすれば、韓国及び中国との友好関係を築くのに必要な歴史認識を著しく欠いていたことになります。かつて日本が韓国を植民地支配していたこと、特に満州事変以来の昭和前期の十五年戦争で中国大陸への侵略をほしいままにしたことを、首相や閣僚の皆様はどのように見ているのですか。自衛のための植民地支配・中国侵略だから許されるのだ、と言い張るのでしょうか。靖国神社の遊就館の展示には、そのような見解が臆面もなく開陳されています。あまりにも自己中心的で、身勝手な見解ではありませんか。韓国も中国も、過去の植民地支配及び侵略戦争の実態を日本が直視し、真摯な謝罪と反省の精神に立って両国と向き合うことを求めているのです。それに応えることこそ日本国の道義を回復する最善の道なのではないでしょうか。
 首相や閣僚の靖国神社参拝は、憲法第20条に違反する行為であるがゆえに、私たちは強く抗議します。靖国神社は本質的に天皇のための戦争の神社であり、天皇のために戦病死したと判定された者だけしか祀られていません。歴史を正しく認識するなら、満州事変以来の十五年戦争において昭和天皇が果たした重大な役割を見逃すことができません。国策を誤ったとしか思えない満州事変の拡大、日中戦争への深入り、アジア・太平洋戦争への突入に、昭和天皇は最高の責任を負っているのです。そうした厳しい批判の目を向けている私たちのような日本人が少なからずいることに心に留めて、今後の靖国神社参拝は厳に慎まれるよう切望してやみません。
 直近のこととして昨4月28日、首相の強い意向から、対日平和条約・日米安保条約が発効して61年目を「主権回復の日」として祝う行事が政府主催で行われことにも、私たちは厳重に抗議します。私たちは、61年前のこの日に、アジア・太平洋戦争末期の沖縄戦で言語に絶する犠牲を強いられた沖縄が、それに追い討ちを掛けるように日本から切り捨てられたことを決して忘れません。沖縄にとって、この日は「屈辱の日」なのです。そんな沖縄を思いやる気持ちの微塵もないことが、現在も沖縄に多大な米軍基地負担を強いたままでいるのだと思われてなりません。本当に悲しいことです。
 
2013年4月29日
日本長老教会社会委員会
委員長 星出卓也


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