首相及び閣僚は自称“私的参拝”、実質“靖国神社公的参拝”をしないでください

内閣総理大臣 安倍晋三殿

 4月21日から始まる靖国神社の春季例大祭の前後に、国会議員169名が2013年4月に靖国神社に参拝しました。その中には麻生太郎副総理、新藤義孝総務大臣、古谷圭司拉致問題担当大臣、稲田朋美行政改革担当大臣の4閣僚、及び加藤勝信副官房長官が含まれていました。安倍首相も神前にささげる供え物である祭具の真榊(まさかき)を同神社に4月21日に奉納しました。
 これらの行為は日本国憲法20条3項が「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教活動もしてはならない」と定めた政教分離原則の違反です。首相及び閣僚は日本国政府を代表する立場であり、その全ての行動は日本政府を代表する者としての性質を帯びています。菅義偉官房長官は4月22日午前の記者会見で、麻生太郎副総理ら3閣僚が靖国神社に参拝したことについて、「私人として参拝したと理解している。心の問題でもあるから、内閣が制約をかけるべきではない」と述べ、安倍首相の真榊奉納に対しても「私人としての行動」と説明し内閣として問題視しない考えを示しています。しかし、国政上の要職にある者がメディアの報道を前にして行う行動は、重大な影響を及ぼすものであり、一宗教法人である靖国神社に対して社会的認知を広め、「国のために戦死したものを英霊として祭る」という極めて宗教的な教義を市民一般に布教宣伝することに寄与しています。現実に年頭の首相や閣僚の伊勢神宮参拝を恒例化することによって、参拝者の数は年々増加傾向にあり、小泉首相以降再び始まった首相在任期間中の靖国神社参拝によって同神社の参拝者が急増しています。このような宣伝効果はメディア報道をフルに活用することによってより大きなものとなっています。すべてが英霊尊崇運動を社会に定着化させるための意図的な行為であると思われます。
 そのような宣伝効果のある政府の要職にある者の行動であっても「私人として参拝した」と言いさえすれば政教分離原則には抵触しないとするのは不合理なことであって明白な欺瞞です。古谷氏は参拝した日の記者会見にて「国務大臣古谷圭司として参拝した」と説明し「国のために命をささげた英霊に哀悼の誠をささげるのは、国会議員という立場からして当然だ」と強調しました。英霊信仰という極めて宗教的な教義が国会議員として当然の行為とされるという趣旨の発言は、政教分離原則を全く理解しない発言です。安倍首相の真榊奉納も「内閣総理大臣」の肩書で奉納されました。
 1975年に首相であった三木武夫氏が靖国神社参拝した際の「私的参拝4条件」(公用車不使用、玉串料を私費で支出、肩書きを付けない、公職者を随行させない)でさえも政教分離原則の理解に極めて不徹底なものでありましたが、この原則すらも踏襲せず肩書明記、公職者の随行を公然とマスコミの前で行った行為は、実質上の明白なる靖国神社公的参拝です。このような実質靖国神社公的参拝を「私的参拝」と説明すれば許されるとするのは、憲法尊重擁護義務違反であります。もし私的参拝によって首相閣僚一個人の信教の自由を守るのであれば、メディアも誰もいない時に行い、行ったこともメディアにも伝えない程の細心の注意が必要です。
 「自民党憲法改正草案」(2012年4月27日決定)では、日本国憲法20条3項の政教分離原則には「ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りではない。」という制限規定が加えられ、儀礼化・習俗化で政教分離原則を空文化する意図が見て取れます。そして靖国神社参拝を習俗化されたものとして定着させるために、首相及び閣僚の参拝行為を繰り返すことは意図的な政府による英霊信仰推進運動であり、政教分離原則違反です。
 以上の理由で首相及び閣僚は、来る8月15日においても、秋季例大祭においても「私的参拝」の名における実質公的靖国神社参拝を決して行わないよう、強く要望致します。
 
2013年7月9日
日本長老教会社会委員会
委員長 星出卓也


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