首相の年頭の伊勢神宮参拝に抗議します

内閣総理大臣 安倍晋三殿

 安倍首相は今年の1月5日に岸田文雄外相、中谷元防衛相、甘利明経済再生相、高市早苗総務相、山谷えり子国家公安委員長、有村治子女性活躍担当相ら11閣僚と共に伊勢神宮参拝を行いました。伊勢神宮は天皇家の氏神とされる「天照大神」を祭る神社で、戦前戦中では国家神道の頂点に位置していた神社です。かつて神社神道を国教とし、国民に参拝を強制したことは、天皇のために命をささげることを国民の最高善として刷り込むことに繋がりました。伊勢神宮や靖国神社を始めとする国家神道が、侵略戦争推進の中心的な役割を担ったことを反省し、戦後は政教分離原則を憲法に規定し、国が宗教団体に関与することを厳格に禁止しました。首相、閣僚が、この歴史の反省に立ち、日本国憲法20条3項に規定された政教分離原則を厳格に守ることは、国政の代表者として重要な義務です。
 しかし歴代首相が年頭に伊勢神宮参拝をあたかも恒例行事であるかのように行い、国と神社神道が深い関係にあるかのような前提を再び作り上げてきたことは、悪しき過去の道に戻ろうとする首相としてあるまじき行為です。1958年に安倍首相の祖父にあたる岸信介首相(当時)は、年頭に伊勢神宮を参拝した後「伊勢神宮は一般の宗教法人と同等に扱えない」と語り、再び国と神道との結びつきを深めようとする問題発言を行いました。安倍首相も祖父の例にならい、平和と逆行する戦前回帰の道を歩んでいることを危惧します。
 1月5日の年頭の記者会見で、安倍首相は戦後70年の総理大臣談話を発表することを明らかにし、「村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体的に引き継いでいく」と語りました。これに対して、アメリカ国務省サキ報道官は「村山談話や河野談話で表明されてきた謝罪が、日本の近隣諸国との関係改善の努力のなかで重要な区切りとなってきた。友好的な対話を通じて歴史問題を解決するよう促したい。」と語り、日本政府の植民地支配の侵略性を反省した村山談話、従軍慰安婦問題の日本政府の責任を認めて謝罪した河野談話を高く評価しました。そして同じ歴史の反省に立つことこそが、近隣諸国との友好のカギであることを示唆しています。この大切な示唆に是非とも耳を傾けて頂いて、過去の過ちを真摯に認め、歴史の反省に立ち、村山談話のみならず河野談話をも継承した歴史認識を、首相として戦後70年の節目にはっきりと表して頂くよう強く願います。侵略加害の歴史の反省に立ち、近隣諸国の痛みに聴き、それに真摯に向き合い、謝罪する勇気を持つことこそが、本当に世界に誇れる日本を創ることではないでしょうか。重ねて、政教分離原則を順守し、靖国神社参拝や伊勢神宮参拝から完全に決別し、平和国家建設の道を歩まれることを心から願っています。
 
2015年1月9日
日本長老教会社会委員会
委員長 星出卓也


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